こんばんは。野島です。



完全に自分の中で盲点になっていたと言えばいいのか、灯台下暗しというべきか吉靴房のカテゴリーの説明をするのを忘れておりました。


わかりにくい、言いづらい、そもそも読めないなど、ありとあらゆる叱咤激励をいただいております。

今日はひとつずつカテゴリーを説明させていただきます。



ひとつ前提として、僕自身が言葉と言葉の音、言霊というとわかりやすいでしょうか。この言葉の音の周波数というのは精神に影響する部分があると考えています。
例えば「ありがとう」という感謝を伝える言葉。英語でThank you、スペイン語で Gracias、フランス語でMerci、イタリア語で Grazie、ポルトガル語で Obrigado などなど少しニュアンスが違えどほぼ似たような意味を持つ言葉は世界各地にあります。
この言葉は言われて基本的に嫌な感情を持つことがほぼないと思います。おそらく現代の人間が思っている以上に昔の人の感覚は鋭かったと思うので、そういう周波数を持つ音の組み合わせも言葉の形成に影響があったと考えています。

意味と音の感覚を両方考えてカテゴリーを決めました。
普段はあまりこういう説明は積極的にしてこなかったですが、こんな感じで考えたんだな~というくらいにご覧いただけたらと思います。




●沓履(とうり)

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吉靴房のメインカテゴリーになります。日本の伝統の延長線上に位置するデザインはここに入ります。
「沓」は重なる、重なり合う、そして靴の意味もあります。重なるは歴史に通じます。
「履」は一歩一歩着実に行う、踏みしめるという意味があります。

歴史を理解し、研究し、その重なった厚みをデザインとして表現する。一歩ずつでも着実に進め、それを履き、纏う。そんな意味を込めて考えました。



●稽靴(けいか)
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主にプロダクトデザインといえるようなデザイン群です。
「稽」は考える、物事を突き詰めて考え合わす、寄せ集めて引き比べるという意味があります。
剣道の練習は稽古といいますが、いにしえを考え突き詰めると考えると非常に納得の言葉です。

吉靴房の靴型を使ってのオリジナルデザインをこのカテゴリーとしていますが、そもそもオリジナルとは何なのかを考えた時、あらゆる経験と知識を寄せ集め自分の脳と感覚を通し出力すると考えました。
そもそも完全なオリジナルなど存在しないとも言えるのですが、つくりて野島なりに考えつくしたデザインとしての意味を込めました。



●おみな
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所謂レディースデザイン全般を意味します。
「をみな」は女性を表す言葉です。和語できみのみはイザナミの「み」で女性を表す意味です。

ちなみにネットでよく見かける君が代の君が男女の愛を意味するという説は間違いだと思います。間違いというか、これは割りと新しい説が流行していると思われます。君は大君、すなわち天皇にほかなりません。


翁に対しておみな。
大人の女性に是非使っていただきたいと願いこの言葉を選びました。



●奥妙(おうみょう)

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おうみょうは奥深く考えすぐれていることやさまを表します。
靴作りを指導するときに一般的な靴のデザインで応用編の最後でロングブーツをやることが多いです。それだけいろいろな基本的なことを深く知ることで作り事ができるデザインだと思います。
そういった意味を込めて付けました。


●淘靴(とうか)

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定番型デザインのカテゴリーを表します。
「淘」には不純物を取り分ける、選り分けるという意味があります。

靴型を使った靴の製作はヨーロッパで諸説ありますが、約500~600年ほど前に始まったとされます。これ自体ははっきりとわからないのですが、型を使って引っ張って沿わせるとなんだかいい感じの袋状のものが出来、これに底材を付ければ靴になると考えた天才がいたことは間違いありません。

そしてその天才的発想から近代までにありとあらゆるデザインが考え出され、選び出された基本デザインがあります。

内羽根や外羽根という形状もそのようにして出来てきました。

先人の経験があるからこそ、今つくりてとして私が靴屋を営むことができることは明白で、後から産まれて携わることができる幸運を感じるのでこのような名前にしました。




●結い物(ゆいもの)

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ダブルネームやコラボレーションデザインを意味します。


結びというのは非常に大事な言葉で、2つ以上のものやことが関係しあうことで、1つを超える新たな何かが生まれると思います。

様々なブランドさんやセレクトショップ、スタイリストさんや関係者などとの繋がりの中から生まれたデザインという意味を込めました。


映画「君の名は。」で三葉のおばあちゃんである一葉が語った台詞。


「糸を繋げることもむすび」

「人を繋げることもむすび」

「時間が流れることもむすび。全部神様の力や」

組紐で「時間」が繋がった二人

「わしらのつくる組紐もせやから、神様の技。時間の流れそのものを表しとる」

「縒り集まってかたちを作り、捻れて、絡まって、時には戻って、途切れて、また繋がり...」

「それがむすび。それが時間」



この言葉を映画館で聴いた時、深く納得しました。
結ぶということの力は個をいとも簡単に凌駕すると思います。


私にとって結い物は非常に大事なデザインと言えます。
そんな意味を込めて名づけました。








いかがでしょうか。
デザイン別カテゴリーはちょっとわかりづらいだろうなと思いましたが、様々な思いと意味を込めて考えました。

お客様にはそんなに気にしていただかなくても全く問題ないことですが、スタッフにはよく理解してもらえると嬉しいです。



疑問質問などございましたら何でも出来る限りお答えいたしますので、遠慮なくお尋ねくださいませ。
今後とも吉靴房をどうぞよろしくお願いします。